凍てつく寒さが吐息を白く染める日、静かなこの町と私の身体を猛る咆哮と歓喜の叫びが駆け抜けた。
咄嗟に身構え振り返る先に広がった光景に言葉を失う。
透けるほどに白い衣を纏った半裸の大群衆が路地を埋めるほどの巨大なわらじを担ぎ雄叫びをあげながら猛進してきたのだ。
観衆は彼らに大水を打ち付けているその度に勢いを増し暴れ動く巨大なわらじ…。
眼前の衝撃から我に返るのも束の間、新たな異変に驚嘆した。
元来、降りしきる豪雪が天地一面を銀世界に変えるはずのこの時節に“雨” が降っていたのだ…。
『ワッショイ!』
気象すら変動させてしまう大歓喜の渦の中に民が崇める、大日如来が見えた気がした。
高畠渡来記 凍雲の頃
概要 | 毎年、一月に行わられる高畠を代表する冬祭り、みこしの担ぎ手の飛び入り参加も大歓迎 !! |
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場所 | 山形県東置賜郡高畠町大字高畠3654 |
TEL | 竜寿院大日如来石仏:0238-52-0229 |
URL | http://takahata.info/detail/?no=3125&year=2017&month=1 |
翠緑の木漏れ日を浴びる小径。
視界の端にふと獣の気配が過る。
見渡せど見えないその存在は腐葉土を駆け、枝に跳ね、肉体というしがらみから解き放たれた自由を謳歌するかの如く、遊びまわっている。
恐怖など感じない奇妙な微笑ましさを覆面に隠し、顔を上げ…嗚呼、さすがに驚いた。
二つの山を取り巻く二匹の獣が、こちらを興味深げに見つめていた。
高畠渡来記 萌葱の頃
概要 | 犬と猫を祀っている珍しいお寺、日本の各地からペットの供養と健康祈願に訪れます、7月にペット供養祭を開催。 |
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場所 | 山形県東置賜郡高畠町高安 910 |
TEL | 犬の宮:0238-52-0229 猫の宮:0238-52-2153 |
URL | http://www.town.takahata.yamagata.jp/014/nekonomiya.html |
「ヤア、これは!
さながら口内は青い薫風のそよぐ極楽浄土の如く!
白い花弁の舞い散る山野を黄金に瞬く豚が躍動し空へと昇る!
荒々しくもたおやかな四本の脚は霞を踏み、黒々としたその眼には聡慧の星を湛え!
美しくも儚い紅梅から瑠璃へと移り行く甘い黎明の溶ける天球を縦横無尽に…」
「おおい、旨くて腰が抜けちまった。口上は良いから助けてくれよ。」
高畠渡来記 碧落の頃
概要 | 本場ドイツで賞を獲得し続けている、全国から注文が絶えない高畠産無添加ソーセージの匠。 |
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場所 | 山形県高畠町大字福沢 21-9 |
TEL | 0238-57-4353 |
URL | http://www.e86.jp/ |
そこにあるのは神だろうか。
いやいや、神というにはなんとも身近で懐かしい。
老いた木肌は内に刻む百代をしなやかにうねらせ、太く張る枝々に清水を巡らせ。
天を仰いでいた。
…陽光に濡れる葉陰にそっと、恥ずかし気なまろい輪郭の果実を隠して。
垣間見える鈴生りの芳香にふくよかな笑顔が滲んで見える。
脳内に浮かぶのは甘く蕩けた果肉と滴る汁。
…思わずひとつ、喉がごくり。
高畠渡来記 椋鳥の頃
概要 | 実は日本の洋梨(ラ・フランス)発祥の地なんです。樹齢百年以上、古木に実る縁起物の洋梨を大切な方への贈り物にぜひ。 |
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場所 | 山形県東置賜郡高畠町三条目 293 |
TEL | 0238-52-0818 |
URL | http://rafuransu.com/ |
やわらかな薫風が笛の音と相共に褐色の岩肌にこだまし、曠然たる空間に響く。
途方もない時間石塊を截断し続けたこの懸崖はさながら堅牢の戯場だろうか。
淡紅の若木は舞台に腕を伸ばし、細やかな爪を揺らし遊ばせ歌と踊る。
…花唇が頬に触れた。
誘われた瞼がひらく。
見下ろせば薄紅の勾配の先、石造りの駅舎が霞んでいた。
高畠渡来記 桜東風の頃
概要 | 天然の劇場になった高畠石の採石場跡、その石で建てられた旧駅舎からは美しい桜並木が高畠駅まで続きます。 |
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場所 | 瓜割石庭公園:山形県東置賜郡高畠町二井宿 469 旧高畠駅:山形県 東置賜郡高畠町高畠 1568 |
TEL | 瓜割石庭公園:0238-52-5433 旧高畠駅:0238-52-1111 |
URL | 瓜割石庭公園:http://takahata.info/detail/?no=1972 旧高畠駅:http://takahata.info/detail/?no=1951 |
揃えた足先は石畳に囁きすら残さず、静寂が古杉の梢にたなびいている。
一揖。
傾く頭に合わせるように、しゃらと胸元の装飾が揺れる。
隣立つ同胞も口を閉ざしたまま、格子の先を淡く包む薄闇へ祈りを捧ぐ。
…知恵、とは。
生を歩む者に等しく必要である。
久遠の刹那、唐突に瞼の裏が白く染まる。
思わず手指の合間から盗み見た同胞は目映いばかりの極彩に包まれ、虚ろな目は冴え…深い知恵を湛えていた。
異教の神は我ら渡来人にも寛容であった。
高畠渡来記 薄霧の頃
概要 | 日本三文殊のひとつ、学問の神様として有名です。永く神秘的な参道を歩き、冷たいかき氷に癒やされる通な楽しみ方も。 |
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場所 | 山形県東置賜郡高畠町亀岡 4028-1 |
TEL | 0238-52-4472 |
URL | http://www.town.takahata.yamagata.jp/014/kameokamonju.html |
隣の客が話慣れた口調で語り始める。
「ソバ、この地きっての名産だと誰もが口を揃える、五輪、この世きっての祭典だと誰もが口を揃える、暦は昭和39 年、高畠の地からも国の威信をかけて栄光の頂を目指した女性がいたのさ」
「なんの話かって?」
「その女性が、今あんたの目の前でソバを打ってるのさ、かつての栄華と記憶が豪華絢爛に彩るこの店でね」
「ソバってのは美味いかって?当たり前、この地の名産よ」
店主のそっと微笑む口元が見える
ソバ、実に神秘的な食べ物ではないか。
こんな話を聞かされながら啜ればこの地の過去と未来を繋いでる気さえしてくる。
無論、絶品。
高畠渡来記 睡蓮の頃
概要 | 東京五輪選手 伊澤まき子さんが営む手打ち蕎麦屋、 聖火を始め 当時の品々で溢れる 店内はまるでミュージアムのよう。 |
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場所 | 山形県東置賜郡高畠町大字高畠 629-1 |
TEL | 0238-52-0140 |
URL | http://samidare.jp/izawa/note?p=list&c=361199 |