○たかはた食と農のまちづくり条例
平成20年9月24日条例第21号
たかはた食と農のまちづくり条例
目次
前文
第1章 総則(第1条-第7条)
第2章 自然環境に配慮した農業の推進(第8条・第9条)
第3章 安全・安心な農産物の生産(第10条・第11条)
第4章 遺伝子組換え作物の自主規制(第12条-第23条)
第5章 たかはたの食と農のまちづくり(第24条-第29条)
第6章 たかはた食と農のまちづくり委員会(第30条-第35条)
第7章 雑則(第36条)
附則
前 文
本町は、町内のいたるところに約一万年前からの遺跡や古墳、洞窟が点在し、風光明媚なところから東北の高天原とも称されています。
本町における農業は、四季の変化に富んだ自然環境や盆地特有の気象条件、肥沃な農用地に恵まれ、稲作、果樹、畜産を柱とした複合経営を中心として発展してきました。また、全国に先駆けて有機農法や減農薬栽培を取り入れ、食の安全や自然環境に配慮した循環型農業を推進してきました。
しかしながら、近年、農業を取り巻く環境は厳しく、農産物価格の低迷や生産資材の高騰が続く中で、農家戸数、担い手農家の減少に歯止めがかからず、このままでは農村活力の低下により、農用地の荒廃が危惧されます。食料の大部分を輸入に依存している我が国にとって、地球温暖化等による異常気象や途上国の経済発展、バイオ燃料需要の拡大などにより世界の食料供給が不安定化すれば、国内の食料需給が逼迫することが予想され、食品の安全性確保と食料自給率の向上は、我が国の農業の緊急課題と言えます。
私たちは、食と農の重要性と農業が持つ環境保全や国土保全、地球温暖化の抑制といった多面的役割を理解した上で、それぞれの役割をもって、これらの機能を守り、先人の築いた文化遺産や伝統とともに、後世に伝えていく義務と責任があります。
こうした視点に立ち、本町の農業を維持、発展させていくためには、規模拡大による作業効率や生産性だけを追求するのではなく、生産者と消費者とが農業に対する認識を共有し、地域の特性を活かした農業の振興を進めていくことが重要と考えます。
このため、本町の農業及び農村が持つ機能的役割の重要性や農村文化を次世代に引き継ぐとともに、地域資源の活用と町民の健康を守り、地産地消、食の安全、環境保全型農業の推進により、魅力ある農林業が息づく農商工が連携した食と農のまちづくりを目指すための指針として、この条例を制定するものです。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、本町が目指す農林業が息づく農商工が連携したまちづくりについて基本理念を定め、町、生産者、消費者及び食品関連事業者等の役割を明らかにするとともに、食と農が支える町民の豊かな暮らしづくりを実現するための施策の基本となる事項を定めることにより、活力ある心豊かな農村社会の構築と町民の健康で豊かな生活の向上に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 地産地消 地域資源の活用と流通過程における経費の低減を目指し、町内で生産された農産物を町内で食することをいう。
(2) 食育 食に関する知識及び食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることをいう。
(3) 遺伝子組換え作物 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「遺伝子組換え生物規制法」という。)第2条第2項に規定する遺伝子組換え生物等であって、作物その他の栽培される植物をいう。
(4) 食品関連事業者等 食品の製造、加工、流通、販売又は飲食の提供を行う事業者及びその組織する団体をいう。
(5) 地域内食料自給率 町内で生産される農産物が町内で消費される比率をいう。
(基本理念)
第3条 食と農のまちづくりは、地域の食文化及び伝統を重んじ、地域資源を活かした地産地消を推進することにより、地域内食料自給率の向上及び安定的な食料供給体制の確立を図るものでなければならない。
2 食と農のまちづくりは、農産物生産を通じて町の産業全体が発展し、生産者が意欲を持って農業に従事でき、自立できる農業環境の整備を図るとともに、担い手が確保されるものでなければならない。
3 食と農のまちづくりは、食と農業の重要性が町民に理解され、家庭及び地域において地産地消、食育等が実践されるよう行われなければならない。
4 食と農のまちづくりは、農薬等の使用又は農業の新技術の導入に当たっては、農地等の汚染又は食品の安全性を脅かすことのないようにしなければならない。
5 食と農のまちづくりは、農地、森林及び水その他の資源が確保されるとともに、農業生産活動が自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能(以下「自然循環機能」という。)が維持増進され、かつ、持続的な発展が図られるものでなければならない。
6 食と農のまちづくりは、農山村が持つ、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面にわたる機能及び食料生産等の多面的機能を活用し、生産、生活及び交流の場の調和が図られるものでなければならない。
(町の役割)
第4条 町は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食と農のまちづくりに関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 町は、前項の施策を講ずるときは、国、県、生産者、農業に関する団体、食品関連事業者等及び消費者と連携するとともに、国及び県に対して施策の提言を積極的に行うものとする。
(生産者等の役割)
第5条 生産者及び農業に関する団体は、安全かつ安心な農産物を安定的に供給するように努めるとともに、農業及び農村の振興に関し、積極的に取り組むものとする。
(消費者の役割)
第6条 消費者は、食、農業及び農村の果たす役割に対する理解を深め、健全な食生活の重要性を認識するとともに、町内産農産物の消費及び利用を推進すること等により食育及び食文化の発展に積極的な役割を果たすものとする。
(事業者の役割)
第7条 事業者は、食料を使用するときは、地産地消の推進に努めるとともに、宿泊施設及び販売、飲食等に関する事業所については、地元農産品の提供及び宣伝に努めるものとする。
第2章 自然環境に配慮した農業の推進
(自然環境と調和した農業の推進)
第8条 町は、循環型で持続的に発展する農業を確立するため、農薬及び化学肥料の使用量を減じた農法を含めた環境保全型農業を推進するとともに、有機性資源の有効活用を図り、農業の自然循環機能の維持増進に必要な施策を講じるものとする。
(農業生産に係る環境の保全)
第9条 生産者は、農産物の生産活動を通じて国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、地球温暖化の防止等の多面的機能が充分に発揮されるように努めなければならない。
第3章 安全・安心な農産物の生産
(安全な食料の安定供給)
第10条 町は、安全な食料の安定供給を図るため、町民が安心して消費できる食品の安全性の確保その他必要な施策を講じるものとする。
(地域内食料自給率の向上)
第11条 町は、基本理念にのっとり、安全な食の生産の拡大を行うことにより、地域内食料自給率を高めるための施策を講じるものとする。
2 町は、地域内食料自給率に関する情報を公表し、食と農に対する町民の意識向上及び町内産農産物の消費拡大に努めるものとする。
第4章 遺伝子組換え作物の自主規制
(自主規制)
第12条 遺伝子組換え作物については、野生動植物への影響並びに農産物の生産及び流通上の混乱並びに一般の農作物との混入、交雑等による経済的被害を未然に防止するため、町民自らが自主的に栽培しないものとする。
(栽培許可)
第13条 町内における遺伝子組換え作物の栽培状況を把握し、遺伝子組換え作物と有機農作物又は一般の農作物との混入、交雑等を防止するとともに、遺伝子組換え作物の栽培に起因する生産上及び流通上の混乱を防止するため、町内において遺伝子組換え作物を栽培しようとするものは、あらかじめ、町長の定める事項を記載又は添付して町長に栽培の申請をし、許可を得なければならない。
2 前項の規定は、遺伝子組換え生物規制法第2条第6項に規定する第2種使用等であるものについては、適用しない。
3 町長は、第1項の申請を受理した場合には、第30条に規定するたかはた食と農のまちづくり委員会の意見を聴かなければならない。
4 町長は、第1項の許可に必要な条件を付すことができる。
(説明会の開催)
第14条 前条の許可を受けようとするもの(以下「申請者」という。)は、町長が指定する関係住民に対し、あらかじめ日時及び場所を定め、当該申請に関する説明会(以下「説明会」という。)を開催しなければならない。
2 前項の住民は、申請者に対して自然環境保全上の見地から意見を述べることができる。
3 申請者は、当該申請に係る栽培にあたり関係住民の同意を得なければならない。
4 申請者は、説明会の実施状況報告書及び当該住民の同意書を前条に基づく申請時に町長に提出しなければならない。
(許可の基準)
第15条 町長は、第13条第1項の許可の申請が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしてはならない。
(1) 当該申請に係る混入交雑防止措置又は自然界への落下若しくは飛散を防止する措置が適正でないと認められるとき。
(2) 申請者が申請どおりの措置を的確に実行するに足る人員、財務基盤その他の能力を有していないと認められるとき。
(3) 申請者が、第20条の規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して2年を経過しないものであるとき。ただし、2年を経過したものであっても、取消しの原因究明、違法状態の是正及び再発防止策の有効性が認められないものも同様とする。
(4) 申請者が法人である場合において、その法人の業務を執行する役員が前号に該当する者であるとき。
(5) 遺伝子組換え作物の栽培に関し、遺伝子組換え生物規制法に規定される主務大臣の承認を受けていないとき。
2 第13条第1項の許可による栽培期間は、1年以内とする。ただし、町長が特に適当と認める場合は、この限りでない。
(許可の変更)
第16条 第13条第1項の許可を受けたもの(以下「許可者」という。)は、その許可の内容を変更しようとする場合には、あらかじめ町長に申請し、変更の許可を受けなければならない。
(届出)
第17条 許可者は、遺伝子組換え作物の栽培を開始し、休止し、又は廃止したときは、その日から7日以内にその旨を町長に届け出なければならない。
(遵守事項)
第18条 許可者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 栽培した遺伝子組換え作物の処理、収穫物の出荷等に関する状況を記録し、その記録を3年間保管すること。
(2) 混入若しくは交雑が生じた場合は、直ちに、その拡大を防止するために必要な措置を講じ、又は混入若しくは交雑を生ずるおそれがある事態が発生した場合は、直ちに、これらを防止するために必要な措置を講ずるとともに、その状況を町長に報告し、及びその指示に従うこと。
(勧告及び公表)
第19条 町長は、許可者及び遺伝子組換え作物を取り扱う食品関連事業者等に対し、遺伝子組換え作物が混入し、若しくは交雑し、又は自然界に落下し、若しくは飛散し、自生する遺伝子組換え作物以外の作物に影響を及ぼさないよう必要な勧告を行うことができる。
2 町長は、許可者が、前項に規定する勧告に従わないときは、許可者の氏名又は名称を公表することができる。
(許可の取消し等)
第20条 町長は、許可者が次の各号のいずれかに該当するときは、第13条第1項の許可を取り消し、又は許可の内容若しくは条件を変更し、若しくは新たな条件を付することができる。
(1) 第15条第1項各号のいずれかに該当することとなったとき。
(2) 第18条に規定する遵守事項その他この条例の規定又は許可に付した条件に違反したとき。
(3) 偽りその他不正な手段により、許可を受けたとき。
(手数料)
第21条 第13条第1項又は第16条の許可を受けようとするものは、申請時に申請手数料を納めなければならない。
2 前項の申請手数料の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。
(1) 許可申請 1件につき 174,000円
(2) 変更の許可申請 1件につき 129,000円
(情報の申出)
第22条 町民は、遺伝子組換え作物の混入、交雑、落下、飛散又は自生が生じるおそれがあると認められる情報を入手したときは、町長に適切な対応をするよう申し出るものとする。
(立入検査)
第23条 町長は、許可者に対して報告を求め、必要があると判断した場合には、職員又は学識経験者(以下「職員等」という。)に、ほ場に立ち入らせ、遺伝子組換え作物、施設、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定による立入り、検査又は質問をする職員等は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第5章 たかはたの食と農のまちづくり
(地産地消の推進)
第24条 町は、農林業者及びその関連する団体等による安全な食料の生産の拡大並びに食品関連事業者等による安全な食品の製造、加工、流通及び販売の促進並びに町内の安全な食の消費の拡大を図るため、地産地消の推進に必要な施策を講ずるものとする。
2 町は、公共施設で提供する食材に町内産農産物を積極的に使用し、地産地消の推進に努めるものとする。
(食育の推進)
第25条 町は、健全な食生活の実現を図るため、家庭、学校、地域社会等において、望ましい食習慣、食の安全、地域の食文化等に係る情報の提供、食育に関する人材の育成その他必要な措置を講ずるものとする。
(有機農業の推進)
第26条 町は、基本理念にのっとり、安全な食料の生産を促進するため、有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号)第2条に規定する有機農業を推進するものとする。
2 町は、有機農産物及び農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産方式によって生産される農産物の生産の振興及び消費の拡大を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(食のブランド化)
第27条 町は、地域の特性を活かした農産物の生産振興、販売、流通等の促進及びたかはたブランド(たかはたブランド認証要綱(平成19年10月9日制定)により認証された農産物をいう。以下同じ。)の確立を図るため、次に掲げる施策の実施に努めるものとする。
(1) 消費者等の需要に応じた収益性の高い農産物に係る情報の的確な把握及び当該情報を活かした農産物の生産の拡大に関する施策
(2) たかはたブランドに係る生産者及び生産組織の育成に関する施策
(3) 町内産農産物の信頼を高め、需要及びその販路拡大に関する施策
(4) 観光産業及び食品関連事業者等との提携による町内産農産物の利用促進に関する施策
(都市と農村との交流の推進)
第28条 町は、活力ある農業経営の自立を図るため、農業者等の主体的な活動への支援及び都市と農村との交流を促進するものとする。
2 町は、都市部からの情報収集及び本町の情報発信に努め、生産者と消費者とが互いに信頼関係を高められる農産物の販売体制整備に努めるものとする。
(担い手の育成及び農業従事者の確保)
第29条 町は、意欲ある農業の担い手の確保及び効率的な組織経営の促進を図るため、誇りを持って農業に従事し、かつ、安定した収入が確保できるよう必要な施策を講じるものとする。
2 町は、新規就農者、高齢農業者、女性農業者、小規模農家等が多様な農業経営に取り組むために必要な施策を講じるものとする。
3 町は、集落単位を基礎とした農業者の組織、農業生産活動を共同で行う農業者の組織、委託を受けて農作業を行う組織等の活動の促進に必要な施策を講じるものとする。
第6章 たかはた食と農のまちづくり委員会
(設置)
第30条 食と農のまちづくり施策に関する事項を審議するため、たかはた食と農のまちづくり委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(所掌事項等)
第31条 委員会の所掌事項は、次のとおりとする。
(1) 町長の諮問に応じ、食の安全、安心及び農業振興に関する事項の調査及び審議
(2) 農業施策の検証及び評価
(3) 前2号に掲げるもののほか、この条例の規定によりその権限に属された事項
2 委員会は、食と農のまちづくりに関し必要と認める事項を町長に建議することができる。
(組織、委員及び任期)
第32条 委員会は、委員10人以内で組織する。
2 委員は、学識経験者、消費者、生産者及び町長が必要と認める者のうちから、町長が任命する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長)
第33条 委員会に会長を置く。
2 会長は、委員会を代表し、会務を総理する。
3 会長に事故あるときは、あらかじめ会長が指定した委員が、その職務を代理する。
(会議)
第34条 委員会の会議は、会長が招集し、会長が議長となる。
2 委員会は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない。
(部会)
第35条 委員会は、必要に応じ、部会を置くことができる。
第7章 雑則
(委任)
第36条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
附 則
この条例は、平成21年4月1日から施行する。